沖縄のジュゴンの現状と対策 -沖縄ジュゴン研究観察グループ-(大人の自由研究)

沖縄におけるジュゴンの実態を、公表されている資料や論文等をもとに情報発信・調査分析・提言を行っています。沖縄本島周辺のジュゴンは残り3頭と見られ、主たる生息地は嘉陽と古宇利島近海です。繁殖策を取らなければおそらく絶滅します。基地問題とからめたジュゴン保護では、沖縄のジュゴンの未来を守ることはできないのです。運営は民間人によって行われ、正式な研究機関ではなく「大人の自由研究」のスタンスです。

沖縄のジュゴンの概要ジュゴンとは?

沖縄のジュゴン。どんな調査資料があるのか?

おはようございます。
本日は、沖縄のジュゴンに関係する資料等について紹介しようと思います。

資料を紹介するにあたっては、なぜジュゴンについて調べ始めたのかということについても、少し触れておいたほうがいいかもしれません。

ジュゴンについて調べはじめたのは、実は沖縄の報道に関係しています。
沖縄の報道については偏りがあるなどと指摘されていますが、まさにそう感じていました。
そのころは「ジュゴンなんて・・・」と思っていたものですが、ジュゴンジュゴン言うけれど「では、ジュゴンの実態はどうなっているのだろう?」という話が出て、調べ始めたのがきっかけとなります。

公表されている資料等を実態を調べると、主たる生息地は辺野古ではなく嘉陽海岸と古宇利島近海であること、何よりも沖縄(日本)に残り3頭しかおらず、自己繁殖できないことがわかってきました。

実際に調べてみて、基地問題とは関係ないところで危機的であるということ。
「こうして見ると、やっぱりジュゴンがかわいそうだ。何かアクションができないか」と感じました。

そして、遺伝子的に近いとされるフィリピンからの移入・(自然環境下での)繁殖対策を試みることができるのではないかという提言と、ジュゴンに関する情報発信をすることに至っています。


報道等をみても、あくまでも基地反対という立場ばかりがクローズアップされ、基地問題と絡めてジュゴンが持ち出される。
肝心な「残り3頭しないであろうことや、自己繁殖できないであろうこと」は殆ど報道されていません。
また、これまで「ジュゴンを守れ」と声をあげ、これからも声をあげるであろう人たちが、「基地とは無関係に絶滅する」ということには触れようとせず、何ら対策をしようともしません(飼育環境下ではできないと主張)・・・。
おかしな話だと思いました。


最小個体数3頭については今年5月23日、琉球新報の記事が最初であろうと思われますし、最近になって既存のジュゴン保護団体が最小個体数3数について示唆する動きがでてきました。
ただ、専門家的には「10頭以下」としていて3頭を認めているわけではないそうです。
10頭以下でも繁殖対策をしないと危機的だと思うのですが・・・


こちらのグループは正式な研究機関ではなく、資金があるわけではないのでできる事も限られています。
現地調査も行ったりしますが、潜ったり船をチャーターするような資金はなく、現地調査のガソリン代すら正直きついくらいです。
かといって、寄付金を集めたとしてもできる事は限られていますし、お金でもめるのも嫌なので、自腹でやることにしています。
(昨日紹介した海図は1枚4千円くらいします・・・財布が痛い)

よい言葉がうかびあがらなかったのですが、最近いい言葉が浮かびました。「大人の自由研究」と題しています。

そんなグループがどうやってジュゴンのことを調べるかと言うと、「資料等調査」を行うこととなります。

WEBでググるだけで結構な資料が出てくるんですね。しかもかなり具体的な資料なのです。
こちらで参考にしている資料等について紹介してみます。

資料については★5段階で評価させていただいておりますが、あくまでも独断です。
皆様が資料に目を通されたうえでどう感じるかは違うと思いますが、大きく分けると「・・・だから基地反対である」とテンプレート的に結ばれる資料と、そうでない資料があります。今回紹介するのはそうではない資料です。
実態が淡々と述べられているか、今後何をすべきかを、調査研究の内容に基づいて検討している資料、論文、書籍です。
基地問題に利用したい人からすると認めたくない資料なのかもしれませんが、「ジュゴンって何か?」「ジュゴンを守りたい」と真剣に考えるならば、決して無視してよい資料・書籍ではないと思います。


★★★★★
「ジュゴンと藻場の広域的調査(H13-17)」環境省

沖縄のジュゴン。どんな調査資料があるのか?

http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=7864
詳細はリンク先のPDFで
この調査は沖縄のジュゴンに関し総合的に検討を行ったもので、少し古い資料ではありますが、沖縄のジュゴンって何だろう?と考えるうえでの情報が殆ど網羅されています。
2006年の報道発表において「最小個体数5頭」と発表したのは本調査です。


★★★★★
「ジュゴンの上手なつかまえ方」市川光太郎著

沖縄のジュゴン。どんな調査資料があるのか?

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本書は2014年8月に発売されたばかりの本で、ジュゴンという生き物について知りたいという方が読むとすれば、一番の本ではないかと思います。研究者の市川先生の文章も面白く、研究について紹介している本にありがちな堅い感じがなく、読みやすくてクスっと笑えるエピソードもたくさんあって、学びながら最後まで楽しく読むことができます。
内容についてはジュゴンが鳴くことやその調査、ロデオ法による捕獲調査、世界のジュゴンのことから沖縄におけるジュゴン(個体A、B、C)についても紹介されています。
お勧めなので是非ともご購入いただければと思います(大人から小学校高学年から楽しみながら学べる良書だと思います)。

★★★★
「シュワブ(H24)水生生物調査」防衛省沖縄防衛局

http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/syuwabusuiikiseibutu/syuwabusuiikiseibutu.html

防衛省沖縄防衛局が「環境影響評価」の追跡調査として行っている、最新の情報です
ボリュームが多くPDFファイル8個目の後半から「6-16」という項目にジュゴンについて掲載されています。
加入個体がなく(海外から回遊または出産でうまれた)、最小個体数3頭ということが明記されています。
「ジュゴンは反対派にしか見えない」などと揶揄する人がいますが、事業主体である防衛省だってジュゴンを撮影しています。こうしたデータを参考にしたうえできちんと議論しないと、どちらも感情論になってよくないと思います。

「ジュゴンと藻場の広域的調査」を頭に入れたあと、本資料を読むと沖縄のジュゴンの現状に関する知識が得られるのではないかと思います。


★★★
「環境影響評価書(要約書)」防衛省沖縄防衛局

http://www.mod.go.jp/rdb/okinawa/07oshirase/chotatsu/hyoukayouyaku/hyoukayouyaku.html
報道等を通してご存知の悪名高い資料です(笑)
皆さん読んだことありますか?読まずして語るのはおかしな話ですね。
埋め立て承認の根拠になった資料であり、どのような判断で埋め立て承認に至ったのかわかる重要な資料です。
本書はかなりボリュームが多く読み解くのに苦戦しますが、要約書の項目6-16は2ページにまとめられていますので、目を通されるとよいと思います。もちろんボリューミーな本書に目を通されたほうがいいですよ。


★★★★
「日本産ジュゴンの現状と保護」三重大学ほか

本島版(8期)http://www.pronaturajapan.com/archive/pnresults/pnf8list
宮古八重山版(9期・継続)http://www.pronaturajapan.com/archive/pnresults/pnf9list
おそらく沖縄(日本)において初めて行われたジュゴン調査の資料です。
プロ・ナトゥーラ・ファンド基金というところの資金援助で行われたようで、環境関連の補助というのはこれ以外にもいくつもあるようです。
研究論文ということで一般のひとにはとっつきにくいのと、古い資料なので★4つとさせていただいたのですが、内容としては最高の資料です!食み跡1箇所(1本)あたり200g程度であることなどは、こちらの資料が根拠となっています。


★★★★
「八重山にジュゴンを取り戻そう」酪農学園大学環境システム学部野生動物保護管理学研究室

https://www.sof.or.jp/jp/news/151-200/158_2.php
タイトルどおり八重山におけるジュゴンの研究を行った資料(レポート)です。
前記した「日本産ジュゴンの現状と保護」をもとに、八重山や台湾において追跡調査を行い、八重山諸島においてジュゴンが確認されていないことや、ジュゴンの回遊ルート(フィリピン→台湾→八重山→沖縄本島)の確保の検討を行っています。
OD-SOGが提唱する「遺伝子的に近いとされるフィリピンのジュゴンを移入し、自然環境下で繁殖を試みる(人工的な回遊状態を生み出す)」というアイディアも、こうした研究資料をもとにしています。


★★★
「ジュゴンのはなし(第二版)」沖縄県文化環境部環境保全課

沖縄のジュゴン。どんな調査資料があるのか?

http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/kankyo/shizenryokuka/hogo/dugong_no_hanasi.html
沖縄県がとりまとめたパンフレットです。一般の方に読みやすい優しい文体になっています。
この資料の構成は環境省「ジュゴンと藻場の広域的調査」などがベースとなっていて、定置網にジュゴンがかかった時のレスキューなどが追記されている形になっています。

なお、環境省「ジュゴンと藻場の広域的調査」が主なベース資料になっているものの、報道発表されている「最小個体数5頭」という情報が「詳しい個体数は不明」とされていたり、藻場の図面(位置関係)が書き換えられているなど内容に疑義があるので、同じPDFを読まれるのであれば環境省「ジュゴンと藻場の広域的調査」を先に読まれたほうがいいと思います。
どういう人たちがどのような意図で編さんしたのか、大変気になるパンフレットではあります。


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沖縄ジュゴン研究観察グループは「大人の自由研究」です。研究者ではない民間人によって運営されていますが、研究者が理由あって発信しない部分について、民間人なりに細かく突っ込んでいくのが強みです(笑)ミリオタの方ならピンとくる名称&マークがハマりました。