沖縄のジュゴンの現状と対策 -沖縄ジュゴン研究観察グループ-(大人の自由研究)

沖縄におけるジュゴンの実態を、公表されている資料や論文等をもとに情報発信・調査分析・提言を行っています。沖縄本島周辺のジュゴンは残り3頭と見られ、主たる生息地は嘉陽と古宇利島近海です。繁殖策を取らなければおそらく絶滅します。基地問題とからめたジュゴン保護では、沖縄のジュゴンの未来を守ることはできないのです。運営は民間人によって行われ、正式な研究機関ではなく「大人の自由研究」のスタンスです。

沖縄のジュゴンの概要

沖縄におけるジュゴンの扱われ方考察

みなさんこんにちは。

沖縄におけるジュゴンの扱われ方考察

(防衛省環境影響評価書およびシュワブH24水生生物調査より)


忙しい合間を縫って更新しておりますので、文章が雑になってしまい申し訳ありませんが、「沖縄におけるジュゴンってどうなっているんだろう?」という素朴な疑問から調べはじめたうえで感じたことを、率直に書いてみようと思います。

ざっくり言ってしまうと、具体的な現状に触れられることはなく、イメージや感情で語られることが殆どであると感じています。
その大きな要因が基地問題であり、殆どの場合、基地問題の一端としてジュゴンが取り上げられているような印象を受けています。


基地問題については「何が何でも反対」というイメージがあるかもしれませんが、現実問題必要であると考える人もいるでしょうし、いずれはなくなったほうが良いが、今は必要であると考える人もいるでしょう。
それぞれの考え方があってもよいと思います。(ただし、一方的な報道がなされるのは何とかならないものかと・・・)


本題のジュゴンについてですが、みなさんご存知の普天間飛行場の移設に伴う埋め立て事業に絡めて、ジュゴンがたびたび登場し、議論の対象となります。


反対派の人たちは「ジュゴンが住む海を守れ!」「辺野古を埋立てるとジュゴンが生きていけない。可哀想だ」と主張します。

一方、賛成派や容認派の人たちは「誰も見たことが無い。反対派にしか見えない生き物」「ジュゴンと宜野湾市民の命どちらが大事なのか?」と主張します。


互いに水と油であり、議論になっていない感じさえ受けます・・・。



そこで沖縄のジュゴンについて資料等調査を行ったうえでの感想ですが・・・

●反対派の人たちは、基地反対のためにジュゴンを持ち出すのに、なぜ沖縄のジュゴンの実態について把握しようとしないのか?(調べてるのに伏せるのか?)

●移設賛成・容認派の人たちは、沖縄のジュゴンの実態を把握すれば、辺野古の埋め立て問題とジュゴンとはさほど関係なく、別のところに大きな問題に気づくはずなのに勿体無い。


と、正直なところ感じています。



沖縄のジュゴンに関しては、多くの調査がなされています。

たとえば、辺野古埋め立て承認の根拠資料にもなっており、印象の悪い報道ばかりがなされる「環境影響評価」もひとつの調査資料になります。
この資料(最新版の追加調査含む)には、沖縄のジュゴンが最小個体数3頭であり、主たる生息地が辺野古ではなく、もっと東村よりにある「嘉陽海岸」と西海岸の「古宇利島・屋我地島」近海であることが明記されています。


今年に入り、日本テレビをはじめ各メディアが相次いで「辺野古沖東方5km(または7km)でジュゴンを発見」とありますが、まさに嘉陽海岸のことです。
尾びれの切れ込みから、嘉陽海岸の藻場を利用している個体A(オス)であることがわかります。


沖縄におけるジュゴンの扱われ方考察



この海岸では多くの食み跡(ジュゴンが餌のアマモを食べたあと)が見つかっており、環境省や埋め立て事業主体である防衛省、市民団体に至るまで、嘉陽海岸が主たる餌場であること把握しています。
辺野古沖で相次いで撮影されたのではなく、嘉陽海岸に住んでいることがわかっているジュゴン個体Aを相次いで撮影した、というのが真相ではないかと思います。

なお、個体Aは嘉陽海岸の近くにある「安部(あぶ)オール島」付近で見られることから、ヘリパイロットの間ではあぶちゃんと呼ばれているそうです。


では、今年に入って辺野古の埋め立て予定地で118本もの食み跡が見つかったではないか?
藻場を利用している。埋め立てをやめろ、再手続きをしろ。という意見もあろうかと思います。
また、広く回遊している個体C(Bの子ども)が辺野古を利用している可能性があり、個体Cのためにもアマモ場を守れという運動もあります。

これについて興味深い資料を発見しました。
三重大学を中心とした、おそらく日本ではじめてジュゴン調査を本格的に行った研究論文で「日本産ジュゴンの現状と保護」という資料です。

この中には、食み跡1箇所(いわゆる1本)あたり、地下茎を含め200gほどのアマモの量であるという旨の記述があるのです。

ジュゴンは栄養価の高い地下茎部分も食べたいそうで、比較的被度の低い(もっさり生えていない)アマモ場を利用しているという話もありますが、辺野古の藻場もまさにそういう感じのようです。この記述を当てはめて考えてみます。


118本 × 0.2kg/本 = 23.6kg


なお、同資料には「鳥羽水族館の事例ではジュゴンは1日30kgのアマモを食べる」とあります。
つまり200gという重量に誤差があるとしても、辺野古埋立地で118本の食み跡が見つかったというのは、概ね1日分の食み跡が見つかったということになろうかと思います。

個体A,Bについてはほぼ嘉陽、古宇利島に定着しているので、若くて行動力のある個体Cが利用はしていることが推測できるものの、残り364日はどこで食事をしているのか疑問に感じませんか?


また、沖縄全域(辺野古ではない)で最小個体数3頭であり、その内訳は母子と父と見られるオスであり、おそらくは何ら手立てを加えなければ、そのまま絶滅するであろうことは目に見えています。


「ジュゴンを守れ」ということは大変重要かつ良いことだとは思いますが、基地問題は抜きにして差し迫っている絶滅の危機に対して、「ジュゴンを守れ」と言っている人は、こうした事実を知っているのでしょうか?


もちろん、調査の主力は国ですから認めたくないのもわかりますが、本当にジュゴンが可哀想だと思うなら、やるべき事がたくさんあるはずだと思います。
それを無視してジュゴンを守れといっても、何の説得力もありませんし、絶滅させて基地問題の新たなるカードにしたいのでは?などと勘ぐってしまうほどです。


もちろん真意はそうではないのかもしれませんが、本当にジュゴンが可哀想だと思うなら、ジュゴンの実態についてきちんと調べて、何が必要なのかを真剣に考える必要があると思います。(「・・・だから新基地建設に反対である!」という、ありがちな結論でまとまってしまうのでしょうけど・・・)


移設を推進したい、容認したいと思う人ほど、ジュゴンに対して、沖縄の環境に対してもっと目を向けて学ぶべきであるとも思います。

経済や防衛も大事ですが、かといって環境は二の次というのはいかがなものでしょうか?
環境に目を向ければ、今言われている沖縄のジュゴン保護の矛盾について気づくことができたでしょう。
「感情論ではジュゴンは守れない。何をすべきなのかを考えて実行していこう」と、もっと理論的な議論ができたのではないかと思います。

これはジュゴンに限ったことではなく、環境問題全般に言えると思います。


基地の移設は賛成か反対かという土俵で議論される性質の問題ではなく、宜野湾市民の命とはかりにかけるものではないことが、沖縄のジュゴンのことを知ることですぐにわかるはずです。
そもそも、主たる生息地は辺野古ではないのですから(全く無関係ではありませんが、それは他の埋立て事業や環境問題も同じのはず。辺野古だけで議論されるのはおかしな話です)



このブログでは、沖縄のジュゴンについて、資料等調査および独自の研究観察、考察を交えつつ、沖縄のジュゴンに関する情報発信や繁殖対策について発信していきたいと思います。


なお、繁殖対策については後ほど詳しく書いていきますが、遺伝子的に近いとされるフィリピンからの移入による、自然環境下における繁殖を試みる(人工的な回遊状態を作る)ことがベストではないかと、アイディア程度ではあるものこうした対策が急務ではないかと考えています。


沖縄におけるジュゴンの扱われ方考察


↑実態をまとめたチラシはこちらをクリック↑



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沖縄ジュゴン研究観察グループは「大人の自由研究」です。研究者ではない民間人によって運営されていますが、研究者が理由あって発信しない部分について、民間人なりに細かく突っ込んでいくのが強みです(笑)ミリオタの方ならピンとくる名称&マークがハマりました。