沖縄のジュゴンの現状と対策 -沖縄ジュゴン研究観察グループ-(大人の自由研究)

沖縄におけるジュゴンの実態を、公表されている資料や論文等をもとに情報発信・調査分析・提言を行っています。沖縄本島周辺のジュゴンは残り3頭と見られ、主たる生息地は嘉陽と古宇利島近海です。繁殖策を取らなければおそらく絶滅します。基地問題とからめたジュゴン保護では、沖縄のジュゴンの未来を守ることはできないのです。運営は民間人によって行われ、正式な研究機関ではなく「大人の自由研究」のスタンスです。

「埋め立て」とは?沖縄の埋立て事情

埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは

おはようございます。

本日はジュゴンとも関係のある「埋め立て」について書いてみようと思います。
あまりにも身近なため、正直知ってるようで実は知らないことが多いのではないかと思います。

まず私の埋立てに対する考えですが、「できるだけ減らしてほしい」という願いがあります
しかしながら、一定程度の埋立が必要であることも理解しています。
原理主義的に「埋立ては一切ダメです」というのは、沖縄の経済事情、難しい話なのです。
理由は後ほど説明します。


説明にあたって、「海図」という航海に使用する図面に埋立地を着色したものを使ってみます。
グレーっぽい場所は干潟、水色は10mより浅い海です。
なお、埋立てのライン(もとの海岸線)については不明瞭のものも多いので参考程度にしてください。
各漁港もほぼ埋立地であると考えてよいと思います。


埋め立て状況について説明するため、海図に着色するとともに、「辺野古メジャー」なるものを作ってビジュアル的に比較してみます。縮尺は海図、メジャーともに1/75000です。


埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは


まずは話題にあがる辺野古ですが、160haの埋め立て面積を有しています。
透明プラ板に写したものを「辺野古メジャー」としてみました。


埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは



北の方から大規模な埋立て事業を説明していきますと、大宜味村の「結の浜」埋立地があります。
結の浜は32.7ha、新聞報道によると大保ダムの建設残土を利用した埋立地です。
元々平地が少ない村なので歓迎されているという反面、いい海でした。沖合いにはメスの個体Bが住む古宇利島があります。
辺野古の1/5しかないと考えるのか、1/5もあると考えるのか・・・

埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは
埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは
埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは
結の浜埋立地




埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは


金武湾には主に火力発電所を中心とした埋立地があります。
ここの埋立地の特徴としては「灰捨て場」があることです。これも埋立ての一種です。
石炭火力発電を行っているので、焼却灰を捨てる処分場(管理型処分場)としての埋立地が必要なわけです。
管理型処分場は全く無害なもの意外(安定品目)以外の処分を行う処分場です。



埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは


中城湾には広大な「中城湾工業団地」があります。
393haと広大で辺野古の2倍以上の面積があります。
まだ空き地も多く、十分に活用されているとはいえませんが、理由については後ほど説明します。

また、現在進行中の泡瀬干潟埋め立て地や、泡瀬地区の一部、海邦町も埋め立てらしいです


埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは


西原町と与那原町にはそれぞれ石油基地と、マリンタウン東浜’(142ha)があります。
環境省「ジュゴンと藻場の広域的調査」によると、埋め立て事業によりアマモ場が消失したとあります。
平安座の石油基地も埋立地みたいなのですが資料がないので今回割愛しています。



埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは


那覇は歴史的に埋立地だらけです。
もともと那覇は前島と浮島という離れ島で、「長虹堤」の建設による土砂体積や居住区拡大のための埋め立てが行われてきたそうです。
奥之山の周辺や鏡原町も埋立地だそうです。

那覇市港町(安謝新港)やうみそら公園、波の上人工ビーチも埋立地です。
遊び場だった波の上のリーフが埋立てられてビーチになったとき相当悲しかったです。
誰も文句を言わないですし、むしろ喜ばれている現状がありますが。

人工ビーチでビーチパーティーを楽しみながら「埋立ては絶対反対です!」などと言っていたらちょっとはずかしいですね。
リーフを埋立てて「人工的に作ったビーチ」ですから。

もし原理主義的に絶対埋立て反対なら、人工ビーチや埋立地の利用から辞めると非常に説得力があります。
果たしてそういう人がいるのかどうか・・・身近なことですから。


浦添市は西洲の港湾地区を拡大し、浦添コースタルビーチリゾート計画や那覇軍港の移設の話があります。
軍港移設ばかりがクローズアップされますが、人工ビーチ及び公園、民間港として埋立てられる場所が多いのです。
港湾やコースタルビーチの埋立て予定地にはいい藻場があるのですが・・・非常に残念です。


埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは



南に下っていくと、現在進行中の那覇空港第二滑走路埋立地、豊崎、西崎、潮崎の埋立地があります。
「辺野古はダメで那覇空港はいいのか?」とよく引き合いに出されますが、埋め立て事業面積はどちらもほぼ同じ約160haです。

また、商業地として栄えている豊崎も160ha
「辺野古ってどのくらいの海を埋立てるのだろう?」と体感するには、豊崎に足を運ばれるとよいかもしれません。

西崎には多くの人が住み、工業地があり、水産高校などの学校もたくさんあります。
こうした埋立地にすみながら「埋立て絶対反対です」というのなら、まずは足元が埋立地であることを理解することが必要だと思います。
こうした事情があることを知らずに、理想で語るのは私だったらはずかしいと思ってしまいますが・・・。


「辺野古の海はすばらしい!埋立て反対だ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、なにをおっしゃいます。
他の海だってすばらしい。サンゴもジュゴンの餌になるアマモ場もあります。
既存の埋立地だって、現在進行形の埋立地だってです。
多くの生き物が暮らしていたんですよ。

私は那覇の海が大好きですが、那覇の海のポテンシャルが低いとは決して思いません。
現在進行形の那覇空港第二滑走路のあたりなんか、ものすごくいい海なのです。
住んでる人がポイ捨てとか汚水対策をしてくれればもっとよくなります。




だいぶ長い話になってしまいましたが「埋立て」は「公有水面埋立法」に基づき実施されます。
昨年末に辺野古の埋立て承認(免許交付)をしたことが許せないという報道がなされていますが、公有水面埋立法の要件を満たしていれば承認せざるを得ない。反対だから承認しないという権限はない。というのが県知事の見解のようです。
仮に他の知事になって「撤回します」と主張した場合、日本国の法律の中で、知事自らが法律を破る可能性がでてくるのかもしれません。


環境破壊は違法だという話もあるかもしれませんが、だとするとこれまで行ってきた多くの埋立は違法行為になります。そこにも環境、生態系があったのですから。
埋立地に住む多くの人、利用している企業は立ち退いて、原状回復する必要があるでしょう。

さあみなさん出て行ってください。そこまで主張するならば、環境破壊であり違法であるということも納得できます。


公有水面埋立法には「50ha以上または特別な事情がある場合環境大臣の意見を求める」旨の条文がありますが、辺野古の場合の特別な事情がジュゴンであったわけですが、その主たる生息地は嘉陽と古宇利島であり、沖縄全体で3頭しかいないであろうことがわかりました。
辺野古埋立の話しがでなければ、沖縄のジュゴンが何もしなければ絶滅するであろうこともわからなかったでしょう。

辺野古埋立の話題がなければ「ジュゴンを守れ」という人もいなかったかもしれませんし、興味を持つ人ももっと少なかったでしょう。
私のグループが繁殖対策(遺伝指摘に近く回遊が示唆されているフィリピンからの移入による、自然環境下での繁殖等)の必要性を訴えて、このようなめんどくさいブログ更新作業をすることもなかったと思います。皮肉な話ですね・・・


沖縄は埋め立てとは切っても切り離せないという話に移ります。

多くの人が「米軍基地があって住む場所がない」などと言うかもしれませんが、そういうことではありません。
辺野古埋め立てが進めば、普天間基地をはじめ多くの基地が返還され、跡地利用されることになりますから。


なぜ、沖縄と埋め立てが切っても切り離せないかというと「物流」の問題があるためです。

多くの生活物資、商工業製品を運搬するためには大きな船が必要です。
船が通るためには港と、安全に船が航行できるための航路が必要です。


沖縄の海はリーフや藻場に囲まれていて浅く、わずかな「天然の航路」を広げて整備する必要があります。

航路を整備すると大量の土砂が発生する。

土砂には海水が含まれていて、締め固めできても塩分が残ります。
これを陸地に使えば塩害がおきますし、そもそもそんなに大量の土砂は必要ではない。



埋め立ての話。沖縄の埋め立てとは


現在進行形の泡瀬干潟埋立て事業で説明するのなら、中城湾の航路整備をした土砂を、泡瀬干潟の埋立て事業に使う。
航路整備すれば、中城湾港の貿易が盛んになり、産業が活性します。
(鉄軌道が沖縄市経由で計画されているとのことで、是非とも中城湾に分岐してほしいと思います。人の往来だけではなく、物流を考えることも重要です)

近くの海を埋立てるので、運搬費が削減できます。事業コストが下がるので埋立地の価格も下がるので、利用しやすくなる。
このように埋め立てされた埋立地が、西崎や豊崎、潮崎、東浜などです。こうした埋立地に住んでいる人が多いのです。
(私個人としては、泡瀬のような商業埋立てこそ無駄な埋め立てで、残土の活用方法をきちんと考えてほしいと思います。)


また、埋め立ては離島生活においては大きくかかわりがあります。
離島は関係ないじゃん?って思うかもしれませんが、航路に土砂が蓄積されれば、貨物を運搬する船の航行に支障がでます。
埋立てをゼロにして航路整備ができなくなった場合、離島に生活物資が届かなくなります。

石垣島に「サザンゲートブリッジ」とその先に全く使われていない埋立地がありますが、これは石垣港を整備したときに発生した航路土砂です。ここにもすばらしい海があったことでしょうけど、この埋立地がなければ石垣島が生活の場、観光地として発展することもなかったのではないかと思います。物流がストップするわけですから。




では、どうすれば埋立を減らせるのか。
まずは土砂が出ないようにする工夫が必要です。赤土等の流出です。
雨が降って土砂が海川に流れれば、当然浚渫しなくてはなりません。こうした浚渫土砂が埋め立てに使われているので、まずは発生源対策をすることです。

そして、「利用目的が明確な埋立て事業に使う」が一番だと思います

那覇空港も辺野古も滑走路に使うということが明確です。
那覇空港裏は私も利用していた海ですが、必要ということもわかるし、利用目的が明確なのでいたしかたないと思っています。
辺野古も普天間飛行場の危険性除去という明確な目的があります。

一方、商業埋立地は「ここは商業地、ここは住宅地」などという計画はあるものの、実際には誰が住む、どの企業が入るまでは定まっていません。分譲してはじめて住宅や企業が立つのです

辺野古に関して言えば、周辺海域、たとえばジュゴン個体Aが住む嘉陽沖からの土砂採取や、県外(鹿児島県や広島県)からの土砂搬入が計画されているそうです。恐ろしくコストがかかってしまいます。

どこまでコストをかけるか、ということはあろうかと思いますが、沖縄の海を守るために、利用目的が明確な埋立地に使うという考えができるのではないかと思います。
あと、既存の埋立地のかさ上げでも埋立を減らすことができます。津波対策にもなりますから。

「基地の埋立ては悪い埋立て、我々が使う埋立はいい埋立て」というダブルスタンダードもよくないと思いますが、正直埋立てって何だろうと考えたことすらない人が殆どではないかと思うのです。


私はできるだけ埋め立ては減らすべきとは考えるものの、原理主義的に絶対NGとは言いません。
当然埋め立てゼロにできるならそれがいいですけど、ドラ○もんがいないと無理だと思います。

かといって、経済優先!埋立歓迎というのも考え物ですが・・・
両極端な話じゃなくて、どこをどう改善していくかが大事だと思うのです。


大量に発生してしまう航路土砂を、利用目的が明確な埋立て事業に使う。
埋立てってなんだろう?現状とメカニズムを考えたうえで、それがベストな選択肢であるのではと感じています。


長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございます。
「埋立てって何だろう?」と考察するうえでの参考になりますと幸いです。
できるだけ沖縄の埋立てについて知っていただきたいので、シェアや拡散いただけますと幸いです。

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沖縄ジュゴン研究観察グループは「大人の自由研究」です。研究者ではない民間人によって運営されていますが、研究者が理由あって発信しない部分について、民間人なりに細かく突っ込んでいくのが強みです(笑)ミリオタの方ならピンとくる名称&マークがハマりました。