沖縄のジュゴンの現状と対策 -沖縄ジュゴン研究観察グループ-(大人の自由研究)

沖縄におけるジュゴンの実態を、公表されている資料や論文等をもとに情報発信・調査分析・提言を行っています。沖縄本島周辺のジュゴンは残り3頭と見られ、主たる生息地は嘉陽と古宇利島近海です。繁殖策を取らなければおそらく絶滅します。基地問題とからめたジュゴン保護では、沖縄のジュゴンの未来を守ることはできないのです。運営は民間人によって行われ、正式な研究機関ではなく「大人の自由研究」のスタンスです。

ジュゴンの繁殖対策

え?仲井眞氏がジュゴン繁殖を公約に??その真相とは

おはようございます。
昨日は大きな選挙、沖縄県知事選の告示日でした。
そこで選挙に関わるジュゴンの話を書いてみようと思います。
今回も長く、また、ややこしい話になってしまいました。

「辺野古の埋立て承認をし、辺野古移設を推進する」陣営がジュゴンの繁殖に取り組みはじめ
「ジュゴンを守れ、辺野古反対」という陣営がジュゴンの実態には触れない(触れられない事情がある?)
ややこしいですね・・・そのうえ長くてすみません。

でも、「ジュゴンがかわいそうだ」と思う方は、是非とも最後まで目を通していただきたいと思います。
また、「沖縄のジュゴンの繁殖」に言及した公約を入れてくれた、仲井眞氏の陣営の方も、きちんと目を通していただければと思います。


え?仲井眞氏がジュゴン繁殖を公約に??その真相とは




ジュゴンと政治は切り離して考えていきたいものですが、残念ながらこれまでジュゴンは政治利用されていたのではないかと感じることさえあります。こうした政治的な動きとは関係なしに、残念ながら現在、残り3頭と見られる危機的な状況にあります。

遺伝子的に近いフィリピンからの移入(人工的な回遊状態を作る)、自然環境下での繁殖を試みるというアイディア等はありますが、これは個人レベルではできることではありません。費用面にせよ法的な面(ワシントン条約など)にせよ、やはり政治じゃないと解決できない。
皮肉な話ですね・・・。


今回の知事選挙、保守系であったはずの翁長氏が革新系と組んだり、革新系もミュージシャンの喜納氏が出馬するなど、カオスな状況になっていますね。
争点は「普天間基地の名護市辺野古への移設」などと言われていますが、ぶっちゃけ興味がなくて生活がもっと豊かになればいいんじゃないですか?って考えている人も多いでしょう。また、あまり政治に関心がない人でも「辺野古にジュゴンがいるんでしょ。ジュゴンがかわいそうだ。」って思う人は多いでしょう

ジュゴンがかわいそうという方には、是非とも現状をしっかり把握していただきたいです。

え?仲井眞氏がジュゴン繁殖を公約に??その真相とは


主たる生息地は嘉陽海岸と古宇利島海域で、残り3頭と見られています。
母子と父と見られるオスの計3頭、近親交配となり自己繁殖が難しい状況です。

普天間飛行場の移設に関係なく、既に絶滅の危機なのです・・・。


今年8月、日本テレビをはじめ各メディアが「辺野古沖東方5km(または7km)でジュゴンを発見!」という報道をしましたが、まさに嘉陽海岸なんですね。
え?仲井眞氏がジュゴン繁殖を公約に??その真相とは


防衛省の調査資料に辺野古崎から東方5km、7kmをかぶせてみるとわかると思います。
嘉陽海岸は個体Aの住処なんですよ。
あいついで発見されたのではなく、だいたいいつもいる、尾びれに切れ込みがあるオスです。


さて、てぃーだブログでは大変な反響があった記事となったチラシをご覧になった方も多いでしょう。
配布されているので書いてしまいますが、仲井眞陣営が配布したチラシでした。
内容には「ジュゴンからひとこと 沖縄の平和を守るため、辺野古崎が埋立てられてもボクらは何も困らないよ。藻場もいっぱいあるからね」と書かれています。
(現物持っていたんですが・・・ちょっと探してます。)
●←関係記事:重要なおねがい。


作った人は申し訳ないですが、勉強不足だと思います。
全く間違いではないのですが、言葉足らずといいますか理解していない。
そもそも、これを見た人がどう感じるのでしょう?
「ふーん、なるほど」って思う人より、「けしからん」って思う人が多いんじゃいでしょうか・・・
まあ、保守派の人の多くがこれまで「ジュゴンと宜野湾市民の命、どっちが大事なんだ」という論調でしたから、仕方ないのかもしれませんが・・・

しかしチラシが全く的を得ていないかといえば、書き方の問題であって一定程度現状は踏まえている
とも思います。
各種資料等を読み解いて実態を調べれば、辺野古は時折利用する藻場の一つであって、主たる生息地ではないことがわかります。

私が問題のチラシに付け加えるとすれば
「ジュゴンからふたこと 沖縄の平和を守るため、辺野古崎が埋立てられてもボクらは何も困らないよ。藻場もいっぱいあるからね。
それよりも仲間がいなくて寂しいな・・・繁殖できないから何とかしてほしいんだ。このままじゃ絶滅だよ。」

となるでしょうね。

まるで「辺野古埋め立ての承認をした悪人」かのような印象で報道されている仲井眞氏ですが・・・

「沖縄のジュゴンの保護、繁殖のため研究センターの設立構想の検討に取り組みます」

という公約を取り入れてくれたのですが、皆さんご存知でしたか?

え?仲井眞氏がジュゴン繁殖を公約に??その真相とは



なお、ジュゴンの生息環境に関わる藻場の創設や赤土対策についても具体的に触れられています。
このような公約については報道されませんね?なぜでしょう?


詳細は下記リンクで
●←なかいまビジョン(PDFファイル)
http://www.nakaima.info/?page_id=3028



え?仲井眞氏がジュゴン繁殖を公約に??その真相とは

え?仲井眞氏がジュゴン繁殖を公約に??その真相とは
こんな感じで載っている。



「ええ?何で辺野古埋め立てを承認した仲井眞氏がジュゴンの保護・繁殖を??」って不思議に思いませんか?
この事情について解説していきたいと思います。

この公約はとても画期的なことであるとも思います。
保守系の中の流れが変わっているといいますか、「ジュゴンの実態に目を向けるべきだったのでは」という前進が見られています。
(例のチラシはその前の情報というか感覚で作られていると思います・・・)
しかも、研究者ではない、たかが一般県民の訴えに耳をかたむけてくれたのです。


これまで環境よりも経済を優先してきたと見られていた仲井眞陣営が「ジュゴンの繁殖の検討」という踏み込んだ公約を取り入れてくれた。
とても大きなことでじゃないですか。
ジュゴンを守れと主張される皆さん、画期的な公約だと思いませんか?


え?仲井眞氏がジュゴン繁殖を公約に??その真相とは

では、「沖縄のジュゴンの保護、繁殖のため研究センターの設立構想の検討に取り組みます」

の真相に、もっと迫ってみます。


まず文中に「繁殖」が入っていることは大きいです。

どの陣営であれ「ジュゴンを保護します」と主張するでしょう。
ただ、”保護の定義”がどこまでなのかが問題です。


これから先もジュゴンが子孫繁栄できることも保護ですが、今居る個体を寿命または病気等で命を失うまでの間でも、保護は保護です。


残り3頭(母子と父と見られるオスの3頭)では、近親交配となり自己繁殖できないですから、単に「ジュゴンを保護します」と言っても、今居る個体を守ればいい。あとは知らないってことでも「保護」なのです。



しかし実態は嘉陽海岸と古宇利島が主たる生息地であり、辺野古は若い個体Cが時折利用していると見られる藻場の一つです。

注:全く利用しているわけではないですが、今年に入って見つかった食み跡118本も、おそらく1日分です。
●←「日本産ジュゴンの現状と保護」より。
計算: 118本 × 200g ÷ 1000g/kg =23.6kg  < 30kg/日のアマモを食べる ・・・おそらく1日分。


辺野古埋め立て反対のために、辺野古でジュゴンの痕跡を探す人、信じる人がいると思います。
それはそれで結構なことなのかもしれませんが、それではジュゴンが繁殖できない。


何ら対策をしなければ、いずれ絶滅してしまうでしょう。残り3頭で親子と見られてますから。


基地問題にジュゴンを持ち出すためには、繁殖なんて触れるわけにいかないのではないかと思います。
繁殖に取り組もうとすれば、現状を把握しないといけない(認めないといけない)。

残っている個体数も、主たる生息地が辺野古ではないことも、資料等明らかになってしまいますから。
「ジュゴン=辺野古」という構図を自ら切り崩すことになってしまいます。

だから、辺野古埋立てに絡めて「ジュゴンを守れ」という人に、繁殖を期待することは難しいのではとも思います。今いるジュゴンの個体を守ってくれるでしょうけど、ジュゴンの子孫繁栄までは考えない。それでも保護は保護なんですね・・・。


それともう一つ。
「検討に取り組みます」とあります。

なんだ、検討だけじゃないか。やるとは言ってないじゃないか。
そうなんです。今のところ検討だけなんです。
どういうことか?



残り3頭で自己繁殖できないので、遺伝子的に近いとされるフィリピンからの移入による、自然環境下で繁殖を試みるというアイディア。
これは一般県民が「大人の自由研究」として、資料を調べたうえで考えたアイディアにすぎませんから、本当にできるのかどうかわかりません。
できるとすればこの方法があるのではという程度です。
●←参考サイト「八重山にジュゴンを取り戻そう」・・・人工的な回遊状態の創設。

研究者(大学や水族館など)や関係者(環境省、防衛省、県、漁協、市民の研究グループなど)を集めて、現状どうなっていて、何が問題で何をすべきなのか。移入によって繁殖を試みることができるのか(移入できるのか)などなど、ジュゴン繁殖を行うために「検討する」ことはたくさんあるんですね。
たとえば、漁業者との強力はかなり重要になってくるでしょう。

いきなり研究センターを立ち上げて、結局「絶滅しました」では税金の無駄遣いになってしまいます。
行程の問題であって、まずやらないといけないことは「検討」なのです。




ではなぜこれまで検討されてこなかったのでしょうか?これは不思議です。
ただ、繁殖に触れてもらっては困る人達がいるのではという推測はできます。今まで個体数が3頭しかいないであろうことなど、徹底的に伏せられていたわけですから。保護団体しかり報道しかりです。

信じられない話かもしれませんが
「ジュゴンを守れ」という団体のFBページに「繁殖対策どうするんですか?」というコメントをしたところ、5分でブロック/削除を喰らってしまいました。理由は「関係のない書き込みがあったため削除させていただいた」のだそうです。

この時、「ああ、なるほど」と思いました・・・(沖縄ジュゴン研究観察グループがツイッターをはじめるきっかけになった案件でもあります)。
●←重要なおねがい



告示日を過ぎたということでネット選挙の解禁ということですが、沖縄ジュゴン研究観察グループとしては、誰に投票してくださいというのは止めておきます。
ジュゴンに興味を持っている方が、「ジュゴンを守りたいなら誰がやってくれるのか?」という判断材料の一つになればよいかなと思います。
色々な考えがおありでしょうから。



現実問題を考えて、苦渋の選択をする実行力のある候補に期待したほうがいいのか。
「ジュゴンを守れ 辺野古反対」と理想は立派だが、繁殖対策にさえ触れてこなかった陣営に期待したほうがいいのか。

沖縄のジュゴンは残り3頭と見られ、基地問題と関係なしに絶滅しようとしています。

「ジュゴンがかわいそう」と思うなら、何をすべきなのでしょうか?
しっかり考えていただければと思います。



最後に、仲井眞氏の選挙公約に「沖縄のジュゴンの保護、繁殖のため研究センターの設立構想の検討に取り組みます」をとり入れていただくにあたり、多くの方のご協力をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。

ブログの管理も大変なので、コメントは付けられない設定になってしまっておりますが、何かありましたらフェイスブックページにてコメントをお寄せいただければと思います。

https://www.facebook.com/odsog

「重要なおねがい。」もあわせてご覧ください。
ご協力よろしくお願いいたします。
http://odsog.ti-da.net/e6893925.html

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沖縄ジュゴン研究観察グループは「大人の自由研究」です。研究者ではない民間人によって運営されていますが、研究者が理由あって発信しない部分について、民間人なりに細かく突っ込んでいくのが強みです(笑)ミリオタの方ならピンとくる名称&マークがハマりました。